時の制約

◆2日目

探索者達が朝起きて食堂に向かうと、『貞本』が朝食の支度をしている。
そこには既に『奈々』の姿があり、探索者達を見てにこりと微笑み、
「みんなおはよう!昨日はよく眠れた?」と話しかけてくる。

  • <強制ロール>《アイディア》
    『奈々』は昨日のワンピースと色違いの紫色のワンピースを着ており、よく似合うなと思う。(『奈々』の服装は自由に色合いを変えられるワンピースである。)

食事を終えると、探索者達は【長岡邸】に向かうことになる。

長岡邸・外観

【長岡邸】は宿から歩いて10分程度の所にありる、比較的新しい建物である。
カラフルでアヴァンギャルドな歪な建物は、先ほどまで探索者達がいた大正浪漫の宿とのギャップに眩暈すら感じるだろう。周りには殆ど人通りはなく、中も静かな様子だ。

この土地は10年前に火事があった病院の跡地に立てられた。
『PC1』が巻き込まれ、顔に傷を作った火災である。

火事の原因は、大昔にこの地で【クトゥグア】を呼び出そうとした狂信者が召喚に失敗して【生ける漆黒の炎】を召喚してしまい、地中深くに埋まっているためである。
そのため、コンクリートの地面を剥がすとそこには魔法陣が描かれている。

『PC1』はこの家の前にきた時に激しい頭痛に襲われる。

描写:
あなたは強い頭痛に襲われたかと思うと、燃え盛る炎の中にいる。
熱く、恐ろしい黒い炎があなたの周りを這い回るが、あなたは身動き一つ取ることができない。助けを呼ぶ声も虚しく、ただただその室内にこだまするだけだ。

SANc1/1d3

  • <強制ロール>『PC1』のSANc後《目星》
    うっすらと女性の影が見えたと思うと、あなたは正気を取り戻す。

『PC1』が目を覚ますと『PC1』の様子に対して以下のロールを行うことができる。

  • 『PC1』に《精神分析》
    過去のトラウマを蒸し返したようだ。
    (10年前の火災の現場に訪れたことで発生した)

【長岡邸】に対しては以下のロールを行うことができる。

  • 《オカルト》
    この建物からは一切オカルト的な何かが感じられないが、
    建物が立っている土地から何か嫌な気配を感じる
  • 《歴史》・《知識の1/2》
    この建物場所は過去に火災で焼けた病院があったと知っている
  • 《芸術(建築・美術系)》
    芸術的なセンスを感じる。この建物のデザイナーはアートの才能があると思うだろう

【長岡邸】前でその建物を見ていると、『長岡和比古』が話しかけてくる。

「おーや!客人とは珍しいね!どうしたんだい?諸君?入らないのかい??
ああ、僕かい?僕は天才オカルト学者の『タイタス・クロウ』さ!」

彼はバッと手を広げと、彼の白衣のポケットから免許証が落ちるのに探索者達は気づくだろう。その免許証には『長岡和比古』・28歳・男性と書かれている。

探索者達が拾うと、長岡はバッと免許を奪い取り、
「さあ、我が城に入るが良い!」
と言って探索者たちを迎え入れます。

探索者たちは長岡にいろいろ話を聞きたがるかもしれない。

  • 【長岡邸】について聞く
    「私が数年前にこの地を買い上げて自らデザインした住居を立てたのだ
    いわく付きの土地だと不動産屋には脅されたが、本当にそうなら私が気づかないはずはなかろう」
  • いわくについて聞く
    「どうやら10年ほど前までは、ここは病院だったようだ。
    10年前に謎の火事で消失したと聞いている」

長岡邸・ロビー

外装をそのままに、かなりアヴァンギャルドな配色の室内。
ロビーは展示室を兼ねたものとなっており、『長岡』のコレクションである【怪しげな石板】やかなり巨大な【隕石の欠片】が並んでいる。

『長岡』は彼のコレクションは魔術的な要素を秘めていると盲信しており、嬉々としてその妄想めいた説明をしだすだろう。KPは存分に彼の厨二ロールを行って欲しい。

【怪しげな石板】を調べる

  • 説明書きを読む
    「太古の神・ホテプ神の石板」と書いてある
  • 《アラビア語》
    小学校レベルの算数の教本であることがわかる
  • 《歴史》《考古学》
    およそ2000年前の中東のもので、歴史的に価値があるものだとわかる
  • 《オカルト》
    魔術的な要素は全くないとわかる

【隕石の欠片】を調べる

  • 説明書きを読む
    「魔星・ルイエ彗星の欠片」と書いてある
  • 《地質学》《天文学》
    隕石ではなく、大昔の恐竜の糞の化石であることがわかる
  • 《歴史》《考古学》
    1億年以上前のもので、考古学的に価値があるものだとわかる
  • 《オカルト》
    魔術的な要素は全くないとわかる

この部屋の探索をひとしきり終えると以下のロールを行う

  • <強制ロール>【長岡邸】《オカルト》に成功した探索者《アイディア》
    『長岡』にはオカルト的な才能が一切ないのではないかと思う

上記ロールが終わると『長岡』が

「ふむ、腹が減ったな。客人よ、よかったら食事でもしていかないか?」

と昼食に誘ってくる。

長岡邸・庭園

中庭を望めるテラスになっており、テーブルがいくつか置かれている。
邸内とは打って変わって、センスの良い配置で植物が置かれているだろう。
庭園を見渡すと林檎がなっていることに気づくだろう。

  • 《生物学》《博物学》
    なっている林檎は”紅林檎”と言う種類で、”奈”の字は紅林檎を表す一文字だということがわかる。
    (『芳子』が好きな果物で、そこから『奈々』の名をつけたため)

長岡に庭園について聞くと、半年前に離婚した妻が植えたもので長岡の影響下ではないと教えてくれる。

ひとしきり食事を終えると、長岡は書庫に案内するだろう。

長岡邸・書庫

書斎を兼ねた図書室で、先ほどの部屋とは少し雰囲気が異なる。
内部には幾つかの本棚と書斎机があり、オカルティックな本で埋め尽くされている。

書斎机の上を調べると1枚の写真立てが伏せられている。
見ると長岡が1人の女性と肩を組んで写っている写真がある。
これは『長岡』と『芳子』の写真である。

『長岡』に写真について聞くと、元妻だが半年ほど前に愛想を尽かされて離婚してしまったと教えてくれる。

  • <強制ロール>写真を見た探索者《アイディア》
    写真の女性と奈々の面影が重なる気がする

『奈々』に写真を見せると驚いた表情を見せるが、他人の空似だと言い張るだろう。

長岡邸の書庫の本棚には【フサンの謎の七書】の6巻までと【タイタス・クロウの研究】というファイルが保管されている。

  • 本棚を調べる《オカルト》《目星》
    本棚の端に押し込まれるように置かれた立方体の大きめな缶を発見する。
    中を開けると、6冊の中国語の本を発見する。
    魔術書【フサンの謎の七書】の6巻までである。
    本を全てを読み解くには40週間が必要
  • 本のタイトルを見る《中国語》《日本語の1/2》《クトゥルフ神話》
    タイトルが【フサンの謎の七書】とである事と魔術書で有ることがわかる。
    またこの本は本来は全7巻であることもわかる。
  • 6巻までを斜め読みを行う(5時間ほどかかる)
    SAMc1/1d4 【ティンダロスの猟犬】と【AF時の時計(途中まで)】について書かれている。《クトゥルフ神話》を2得る
  • 『奈々』に【フサンの謎の七書】を見せる
    彼女の表情が少し強張る
    《心理学》過去にこの【フサンの謎の七書】を見たことがあるのではと思う。
  • 『長岡』に【フサンの謎の七書】について聞く
    この本は、この辺りの古書店で本を買ったおまけとして貰った本だと言う。古書店の店主曰く、昔この辺りに中国人が経営する宿があり、そのオーナーから購入したらしい。
    6巻全て読んだが、この本の内容はデタラメだと言う。
    昔この本について調べたファイルがどこかにあると教えてくれるだろう。
    (『貞本』がタイムスリップの直前に古書店で売ったもの。7巻にだけ時を正確に渡るための呪文が記載されているため最後まで売らなかった)
    借りたいのであれば今日中に返しに来るのであれば、持って行っても良いと言う。

【ティンダロスの猟犬】
「【ティンダロスの猟犬】は全身に毒の膿を纏った恐ろしい猟犬である。
それとは時空を不完全な状態で飛び越えた時に遭遇する可能性がある。
また、猟犬は4回以上時空を飛び越えても遭遇するだろう。
猟犬は決して一度遭遇した獲物を逃すことはない。
部屋の隅から不意に現れて、獲物は一瞬のうちに食い殺されるであろう」

【AF時の時計(途中まで)】
「【時の時計】は全長2mほどもある大きな柱時計である。
時計の針は4本あり、その下部には人が入れるほどの大きさの扉がついている
扉の中は見た目以上に広くなっており、中は数人の大人が入るのに十分な広さがある
中に入った人物は願うことにより、多少のずれはあるが、時を渡り望みの時間と場所に行くことができる。
ただし、時の旅人は、その時代の自分とは決して遭遇してはならない。
遭遇した瞬間、その存在は共に霧となり消えてしまうだろう。
時を渡るためには、時計の持つ[POW]と中に入った人全員でPOW対抗ロールを行い、さらに合計8MPの消費に成功する必要がある。
【時の時計】の[POW]は中に人が入って使用される度に、-1ずつされていく。
また、【時の時計】は人智を超えてしまった人間を吸い込み、永遠の時の彼方に葬るだろう。
(どうやら記述はまだ途中のようだが以降の記述はない)」

【時の時計】についての続きは7巻目に記載されている。

  • 本棚を調べる《図書館》
    【タイタス・クロウの研究】というファイルを見つけることができる。
    1970年にロンドンの『タイタス・クロウ』という人物がオークションで手に入れた時計の話が記載されている。

【『タイタス・クロウ』の研究】
「『タイタス・クロウ』はイギリスの有名なオカルティストである。
1970年2月10日にのロンドンで行われたアンティークオークションで【時の時計】を手に入れた彼は、長年にわたり様々な魔導書を読みながら【時の時計】の研究を行った。
仕舞いには彼は人類で初めて【時の時計】の秘密を解き明かし、た彼はサイボーグとなり、半ば人智を超えた存在として、強大な力を得ることができたという。
しかし、彼のその後は誰にも知られていない。」

 

探索者たちと奈々は16時前に【貞本荘】に戻ることになる。
宿に戻り夕食前に一旦皆で風呂に行こうと、『奈々』が提案をしてくる。
しかし『奈々』が部屋に戻った時、彼女が現代に来てから24時間が経過し、彼女は消え、以降20年間もの時間を【時の狭間】で過ごすことになる。

いつまでたっても『奈々』が現れないことを不審に感じた探索者たちは、『奈々』の部屋を探しに行くことだろう。

貞本荘・奈々の部屋

部屋の内部は探索者たちに客室と同じ。
ベッドは使用された形跡があるが、『奈々』の荷物が一切ない。

『奈々』の部屋を出て彼女を探しに行こうとすると、『貞本』が夕飯を食べるように探索者たちに促す。『奈々』がいない事を『貞本』に告げても、彼は「折角の夕食が覚めてしまうので」といって取り合ってくれない。

探索者達が夕飯を食べた後(夕食を食べない場合は頃合いを見てロビーに人が居なくなったっ時に)、ロビーへ向かうと【時の時計】の下部の扉が開いていることに気づく。
その前には顔が焼けただれ、全身が噛み傷だらけの『老婆』が地を這っている。
(老婆はタイムスリップしてきた70歳の『奈々』である)

彼女は声にもならない声で一言、
「『PC1』さん…助けて…」とつぶやくと絶命する。

SANc0/1

  • 『老婆』に《医学》
    彼女は70歳ほどであり、噛み傷による出血死だと分かる。
    顔の火傷跡はずいぶん前に着いたもののようだ。
  • 『老婆』の遺体を漁る
    【老婆の手記】と鍵を見つけることができる。
    (鍵は【貞本荘】の『奈々』の部屋のもの)
  • 『老婆』の服を見る
    老婆はワンピースを着ており、首の部分に小さな機械とボタンが付いている。
    ボタンを押すと、ワンピースの色が変わり、石鹸の良い香りが漂ってくるだろう。

【老婆の手記】

2037年12月
父の遺品であるフサンの書の研究は万全。これで[PC1]さんに会いに行くことができる。
あの4本針の時計で時間を超えることに正直怖さはあるけれど、どうしても彼に会いたい。
彼に恋をしてしまったのだから。
(ぺージ終)

2017年12月2日

無事に2017年にたどり着いた。
やはり[PC1]さんはいい人で、お風呂を覗かないとてもいい人。
私はこの2017年でこれから生きていくと決心した。
(ぺージ終)

どうして?私の研究は完璧だったはず。
なのに、なぜずっと2017年にいられなかったの?
ここはどこ?一体どこなのよ?
(ぺージ終)

2007年12月
あれからどれだけ時間が経ったのか、それすらわからない。
でも、私はあの【時の狭間】とも言える場所から脱出した。
どうやら、今は2007年の12月らしい。
あ、そういうことか。
私が助けてくれた30歳の彼が、あの時に言っていた恩人とは、私のことだったのね。
早く彼を助けに向かわなければ…
(ぺージ終)

無事彼を救うことには成功した。顔が熱い。まるで溶けるようだ。
彼は少し顔に火傷を負ってしまったが、彼は助かったのだからそれでいい。
でも、また私は此処にきてしまった。 今度はいつまで続くのだろう…
(ぺージ終)
一体…どれくらいの…時間が経ったのだろうか
早く…此処から…出して…
(ぺージ終)

以降、探索者たちは、【時の時計】の内部に入り、タイムスリップを行えるようになる。
(タイムスリップの処理はシナリオのギミックを参照のこと)

賢明な探索者達ならば、これまでの情報をたよりに【時の時計】を使って『奈々』を救いに向かうだろう。

また、上記の状況を『貞本』に報告すると、彼は何も言わず足早に自室へと篭ってしまうだろう。彼から話を聞くには、これまでの状況から推察して『貞本』が過去に【フサンの謎の七書】を読んだことがあるという推理を彼にぶつける必要がある。
すると彼は以下の話をしだすだろう。
その口調は、今までの『貞本』の丁寧なものとは異なり、憔悴したものだろう。

「ワシは30年前から来た人間じゃ。
30年前もこの場所で、宿を営んでおった。
当時のワシは妻を失ったばかりで、絶望感に満ち溢れておった。

そんなある日、宿に泊まった客人が7冊の本を置き忘れて行ってな。
興味本位でその本を読んでみると、なんと時間の移動ができると書いてあるではないか。
それがお主らが読んだ【フサンの謎の七書】じゃ。

ワシは死んだ妻にひと目会いたくての、すがる思いで本を読んだ。
世界中から【時の時計】を探して運良く見つけることができたので、妻が生きている時代にタイムスリップを試みたのじゃ。

しかし、何がよくなかったのかうまくその時代には行けず、何故かちょうど今から二年前に飛ばされてしまった。
念のため持ってきた筈の7巻も時計の中でなくしてしまったらしく、こちらに来て以降、怖くてあの時計を再び使う気になれぬ…
もう妻に会いたいなどとは言わぬ。しかし、またあの時代に戻りたいのぉ…」

『貞本』に7巻目について聞くと、7巻目には呪文である【完全な時間移動】と【時計の扉を開く】が描かれていることを教えてくれる。彼はそれを覚えているというが、うまく唱え方を教えることはできない。

《説得》もしくはRPで説得を行うと、『貞本』も一緒にタイムスリップをしてくれる。
彼と一緒にタイムスリップをすることで、彼は時計の中で呪文を唱え、
[完全なタイムスリップ]を行うことができるようになる。

以降は推理パートとなるが、探索者たちが望むのであればもう一度【長岡邸】を訪れさせ、『長岡』と話をさせても構わない。

また、推理パートにて『PC1』が以下の条件をすべて満たした場合、昔の火事の記憶(火事のあった日にち)を鮮明に思い出す。

  • 『奈々』が未来から来たのではないかと言及する
  • 『PC1』の遭遇した【病院】の火事の現場が、現在の【長岡邸】の場所で起きたものではないかと言及する
  • 火事の際に『PC1』を助けてくれたのは『奈々』だったのではないかと言及する

探索者たちの推理が纏まったところで、行動パートに移行する。

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